【図解】不動産投資成功へのポイントは「利回り」と「返済期間」
不動産投資の合言葉
不動産投資をしていると必ず聞く『合言葉』がある。
- 利回りの高い物件を探せ!
- 融資期間はできるだけ長くとれ!
こうした言葉の裏にある背景を、しっかり理解することが大切である。
いい機会なので、なぜ利回りの高い物件を探すべきなのか、なぜ返済期間は長くとるべきなのか、その理由をバランスシートを基に図解してみたいと思う。
不動産投資をする目的
そもそも私たちは、なんのために不動産投資をするのか?
- 手元のお金(キャッシュ)を殖やすため
- 資産規模を拡大するため
といったところだろう。
では、不動産投資において、効率的に手元のお金を殖やし、資産を拡大していくためにコントロールできる因子はなんだろうか?
それこそが、利回りと返済期間なのである。
利回り
1つ目の「利回り」。
これを少々難しい言葉で言い換えると「固定資産(不動産)が流動資産(現金)を生み出す速度」となる。
私たちは、流動資産である現金が欲しいので、それを生み出すスピードが速い資産、つまり高利回りな不動産を求めることは必然である。
不動産が現金を生みだすイメージをバランスシートで表現すると、こんな感じである。(金持ち父さんの本によく出てくる、あの絵である。)
【図1】不動産を1か月保有して家賃収入を得たときのバランスシートの変化(ローン返済前)
バランスシートの見方は大丈夫だろうか?
左側の青色と紫色の領域が「資産の部」、右上の赤色の領域が「負債の部」、その差の緑の領域が「純資産」となる。
図1は、融資を引いて不動産を購入した人が、一か月間不動産を所有して家賃収入を得ることでバランスシートがどのように変化するのかを表す。ただし、ローンの支払い前の状態である。
一か月分の家賃収入を得る(固定資産である不動産が現金を生み出す)ことで、青色の領域が拡大している。そして、青色の領域(現金)を拡大させるスピードこそが利回りなので、利回りが高い方が良いということになる。これは単純。
一方で、時間の経過とともに建物は減価していくので、紫色の領域は少しだけ小さくなる。(一般的に減価償却は年単位で考えるが、今は月単位で考えているため、1か月分だけ建物が減価したと考える。)ただし、普通は家賃収入の方が建物の減価額より大きいので、バランスシートは拡大(=純資産は増大)するのである。
さて、不動産を所有することで家賃収入が得られ、めでたく手元のキャッシュが増えたわけだが、ここから月々のローンの返済をしなくてはならない。
返済期間(返済比率)
一方、2つ目の「融資期間」については、
「借金なんだから、早く返した方がいいのでは?」
と考える方も多くいらっしゃるように思う。
これについても、バランスシートベースで「手元のキャッシュを殖やす」ことに主眼を置いて考えてみたいと思う。
図1のあと、1か月分のローン返済をすることでバランスシートがどのように変化するのかを、図2に示した。
【図2】不動産を1か月保有して家賃収入を得たあと、ローンの返済まで行ったときのバランスシートの変化
左と真ん中のバランスシートは図1と同じ。その後、仮に返済比率を100%としてローンの返済を行った後が右のバランスシートとなる。
真ん中のバランスシートはローン返済前を想定しているが、これは「返済比率0%の返済後」と考えることもできる。よって、現実的な返済比率50%や60%で返済した後は、真ん中と右のバランスシートの中間程度になると考えられる。
さて、家賃収入を得てせっかく増えた手元の現金であるが、ローンの返済に充てることで減ってしまっている。一か月前のバランスシート(左)の流動資産の高さに戻っているのだ。一方で、負債も同額減っている。
ここで気づくことがあるはずだ。
- 返済比率が高くなると、不動産投資の目的である「手元のキャッシュ」(青色の領域)が増えない。
- あまりにも返済比率が高いと、資産規模はむしろ減っていく(建物の減価に負ける)。
つまり、手元のキャッシュを殖やし、資産規模を拡大していくためには、返済比率を極力下げることが必要ということである。
そして、返済比率を下げるには、融資額を一定とするならば返済期間を長くとるしかない。
これが、『融資期間はできるだけ長くとれ!』と言われる所以である。
何は無くとも手元のキャッシュ!
融資期間を長くとることは、負債の返済を先延ばしにしてでも、手元のキャッシュを殖やすべし、ということになる。
この考え方には多少の違和感を感じる方もいらっしゃるだろうが、これは安定した賃貸経営のためには必須の考え方である。
賃貸経営をしていれば、突発的な支出(建物の修繕、入退去時の改装など)は、いつ発生してもおかしくない。その時に手元にキャッシュがなければ、経営としては立ち行かなくなってしまう。
一般的な経営の考え方にも、「キャッシュフロー経営」がある。
これは、帳簿上の収支よりも、実際のキャッシュの流れや、その事業がどれだけキャッシュを稼ぎ出せるかを重視するものである。帳簿上では黒字でも、手元のキャッシュが底を尽きると倒産してしまう。いわゆる「黒字倒産」。
バランスシート上は、負債比率が低いことよりも流動資産比率が高いことの方が重要である。手元の現金を必要以上に返済に充てる必要はない。現金さえあれば、負債は減らそうと思えばいつでも減らせるわけだから。
要は『現金は最強』ということだ。
まとめ
不動産投資と言うと「利回りの高い物件を購入する」ことばかりに目が向きがちになるが、もしその物件が短期間の融資しか組めないものであれば、不動産賃貸業としてはあまり良い物件とは言えない。
手元の現金を殖やし、資産を拡大していくためには、利回りの高さと長期間の融資をセットで考えて物件を取得していくことが求められる。