『賃労働と資本』から読み解く、労働・労賃・雇用
- 作者: カールマルクス,Karl Marx,長谷部文雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1981/10
- メディア: 文庫
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経済学者のマルクスをご存知だろうか。
有名な著書『資本論』に依拠した経済学体系はマルクス経済学とも呼ばれている。
そんなマルクスの著書の一つに
賃労働と資本
というものがある。
『資本論』は数冊に及ぶ大作だが、『賃労働と資本』は、たったの110ページ。
一見すると、小冊子かと思うような薄さ。
たったの110ページ。
でも、この本には、雇われて働くこと、つまりサラリーマンの本質が書かれている。
ポイントをいくつかお伝えしたい。
1.労働とは何か?
資本家は貨幣によって労働者の労働力を買う。
労働者は、彼らの労働力を資本家に対して売る。
雇用とは、労働力の売買契約でしかない。
仕事に楽しさとかやりがいを求めることは、そもそもナンセンス。
そんなものを提供することは、資本家に求められていないのだ。
資本家は労働力を買い、労働者たちを所定の時間だけ労働させることで、
買った労働力を消費する、ただそれだけのこと。
2.労賃とは何か?
『賃労働と資本』には、労賃についてこのように書かれている。
労賃は、労働者によって生産された商品における労働者の分け前ではない。労賃は、資本家がもって一定量の生産的労働力を買い取るべき、既存の商品の一部分である。
例えばパン屋さんが、アルバイトを雇うとする。
このとき、アルバイトの「生産的労働力」も「既存の商品の一部分」、
つまり資本家にとって、労働者の労働力も、原材料の一つだということ。
パン屋さんが小麦粉を買うことと、アルバイトを雇って労働力を買うことには、大した違いはない。どちらもパンを作るための原材料。
また、商品を高く売れるようになったからといって、原材料の値段も上げるということは普通は考えられない。
労働者の労働力は小麦粉と同じ原材料の一つなので、仮に売上が上がろうが、労働者の賃金は上がらないのが普通だということが理解できる。
3.雇用について
資本家たちの戦いの特色は、
労働者の募集によってよりもむしろ解雇によって勝利が得られるということである。将軍たる資本家たちは、相互に、誰が最も多く産業兵卒を除隊しうるかを競争する。
と書かれている。
ここで言う産業兵卒とは、いわずもがな雇われているサラリーマン。
資本家は、機械の導入、ITシステムの導入により、自動化と低職能化を進めることで、
雇っている人間をいかに減らすかを競争している、ということになる。
会社に長期的な雇用、安定を求めることは、そもそもナンセンス。
いかがだろうか?
以上が経済学者マルクスの整理した「労働・労賃・雇用」の説明なのだ。
現実世界には、必要以上に期待と幻想を抱かない方が幸せだということ。
なぜこうした本質を中学や高校の教科書で紹介しないのだろうか?
知られたら、困るのだろう。。。